車を降りると、冬晴れの陽に照らされ地面はホカホカと暖かく、赤や黄色の木々を残す森からの冷気で、肌に感じる空気が心地よい。ついさっきまでの雑踏が幻のようだ。目の前に広がる真鶴の港に風はなく、対岸に浮かぶヨットは静かで行儀良い。マストをたどると、波のように連なる雲がゆっくりと流れ、潮の香りを運んでいる。平日のお昼時を過ぎた港に人影はまばらで、遠くから微かに聞こえる話し声に、水面を這うウミネコのミャーミャーという声が割って入って可愛らしい…。
今回は、今年、真鶴にオープンした「炉端焼き 傳(Den)」を訪れました。12月下旬ですが、木々の紅葉が残っていて森に彩を加えています。
※価格は税込みです
炉端焼き 傳(Den)について
2024年8月23日にオープンした真鶴の新しいグルメスポット「炉端焼き 傳」。真鶴町の老舗干物店「魚伝」が手掛けるお店です。「魚伝」のこだわりの干物は、サバ、アジ、カマスなどの新鮮な魚を一枚一枚手作業で開き、モンゴルの岩塩や秘伝のみりんダレで仕上げたもので、化学調味料・保存料は不使用です。「炉端焼き 傳」では、そんなこだわりの干物を炭火でじっくり焼きあげ、羽釜で炊いたふっくらご飯と一緒に頂くことができます。
使用するお米は、岩手県オリジナルの「銀河のしずく」。約10年の歳月をかけて育てられた品種は、炊きあがりの白さが際立ち、粒が大きく甘味は控えめ、程よい粘りでかろやかな食感が特徴。干物との相性抜群で、米の食味ランキングでは最高位の特A評価を得ています。
入口近くにある羽釜。キレイに磨き上げられ、明日の仕事を待っているようです。炊きあげられたご飯は保温ジャーに移され、出番を待っています。
店舗は真鶴魚市場の前で、すぐ横に海が広がるすばらしいロケーション。
アクセスは、JR真鶴駅より徒歩15ほど。車の場合は店舗前に無料駐車場があります。真鶴駅からバスも出ていて、「魚市場」下車。
営業時間や地図は、ページ一番下の基本情報をご覧ください。
店内は、カウンター席とテーブル席があり、外にはテラス席の用意があります。グレーを基調としたインテリアに、木のカウンターが温かみを加え、落ち着いた雰囲気です。窓からのぞく海の眺めが開放的で潮の香りが旅気分を高めます。
テーブル席のテーブルと椅子の座面が木製なのも、インテリアに統一感をもたらします。
天井を見上げると、「傳」のロゴが入ったかわいい提灯に和みを感じ、降り注ぐスポットライトの光で、上カウンターの干物が際立ちます。
お出汁は銀色のステンレス製,お水は黒いポットで提供されます。初めて店舗を訪れた時、カウンター席に腰を下ろし、セットされていたグラスに、間違えて銀色のポットからお出汁を注いでしまいました。店主がすぐに対応してくれ、とても親切でした。
店主は英語が堪能で、海外からの旅行者も楽しそうに会話しています。
テーブル調味料は醤油のみ。
さばみりん定食
注文が入ると、店主は上カウンターの大皿から干物をピックアップし網の上へ。熱を帯びた魚から、脂のしずくが炭火に落ちると、ジュワッという音とともに煙が上がり、香ばしい香りが店内に漂います。干物の表面に脂とうま味がグツグツ沸き立つ様は食欲をそそり、待ち時間はあっという間に過ぎていきます。
「さばみりん定食」(1500円)。
大きなみりん干しに大根おろしが添えられ、以下の「定食セット」が付いてきます。
・羽釜で炊いたご飯(岩手県産 銀河のしずく)
・十二庵(湯河原)の冷奴
・お漬物3種
・石倉商店(湯河原)の出汁を使ったあおさの味噌汁
・博多明太子
定食のご飯のおかわりは無料です。
また、真鶴魚市場前直売所で購入した魚を炭火で焼いてもらえ、この「定食セット」と組み合わせることもできます。
鰹節(石倉商店)や卵など、トッピングの用意もあり、バリエーションに富んだ楽しみ方が可能です。
肉厚なサバみりん干しは、醤油、みりん、酒、三温糖を使った魚伝秘伝のタレに漬け込まれた自慢の一品。表面はカリッと、中はホクホク。口に入れた瞬間、とろけるような食感と、炭火の香ばしさが広がります。特製ダレがサバのうま味を引き出し、脂の甘味も相まって、多角的で奥深い味わい。
付け合わせの生姜や白菜の漬物は上品な味付け。ご飯と相性がいい明太子は味変を楽しめ、〆の出汁茶漬けのアクセントにも最適。
湯河原の豆腐店「十二庵」の冷奴。店主に、「一口目は醤油を付けずに食べてみてください」と勧められ、口に運ぶと、大豆の豊かな風味が広がり、とろける様な舌触り。
あおさの味噌汁は、湯河原の老舗「石倉商店」の出汁を使ったもの。磯の香りを伴って、奥行きのある味わいに仕上がっています。
かわいい干物の箸置に癒される。
いわしみりん ひつまぶし
「いわしみりん ひつまぶし」(1700円)。
容器にびっしり敷き詰められたいわしみりん。たっぷりのご飯で提供されます。
薬味のネギ、ワサビ、ノリに山椒が添えられ、漬物の小鉢、冷奴、あおさの味噌汁付き。
いわしみりんは、関西風の蒸さずに焼いた「地焼き鰻」のようで、湯河原「瓢六亭」の鰻重を彷彿させます。
いわしを口にすると、表面はカリッとしていて、脂が乗った身はジューシー。香ばしさが鼻腔に広がり、いわしの味をしっかり感じることができます。お椀によそって薬味を加え、熱々のお出汁をかけてひつまぶしに。鰻に勝るとも劣らない味わいで絶品です。
銀鮭 銀王 いくら定食
銀鮭 銀王 いくら定食(1800円)。
宮城県が誇るブランド銀鮭「銀王」。ボリューミーな銀王の干物を炭火で丁寧に焼き上げ、おろし大根と大粒のイクラが贅沢に添えてあります。濃いオレンジ色の魚体に焼き目が付いて表面はカリカリで香ばしい。身を崩して口に運ぶと、フワフワの食感で、上品な甘味とうま味が口中に広がります。イクラと合わせて頂くことで、鮭はとろみを帯び濃厚な味わいに。脂が滲んだ皮も柔らかで香ばしく美味。さっぱりのおろし大根と合わせてみたり、味わいのバリエーションを楽しむことができます。
〆は、もちろんお出汁を注いで鮭茶漬け!銀王の塩分が控えめのため、出汁のうま味を引き出すために、同時に注文したミックスフライ定食のモンゴル岩塩を少々加えました。イクラをちらしてゴージャスな一杯に。ホクホクにほぐれた身をご飯と共にかきこむと、イクラの粒が口の中で弾け、濃厚なうま味が溢れます。銀王の上品な甘みとうま味が合わさり、最高の鮭茶漬けです。
ミックスフライ定食
「ミックスフライ定食」(1700円)。
地アジ・地カマスがそれぞれ2枚づつという、たっぷりすぎる内容で、ガッツリ食べたい方におすすめです。キャベツの千切りに、漬物小鉢、冷奴、あおさの味噌汁が付きます。
フライの上に顔を違づけると、魚と油の香りが香ばしい。
フライにはソースとモンゴル岩塩が提供され、ソースは中濃のような味わいです。
揚げたてのアジフライは衣サクサク、中身はふんわり。ソースによく絡み、アジ特有の力強いうま味で食べ応えあります。
カマスの脂と繊細な風味は、甘味を帯びたモンゴル岩塩で際立ち、口の中でとろけていきます。
イカ爆弾
「イカ爆弾」(200円)。
イカ墨を練り込んだ黒い衣の武骨なコロッケ。ユニークな見た目と味が楽しめます。定食に追加してもいいし、テイクアウトでドライブのお供としてもぴったり。
衣を割ると、ホクホクのジャガイモはゴロゴロとした食感を残し、中心部はチーズたっぷりのクリームコロッケ風。イカの風味が食欲をそそります。
まとめ
東京、横浜からのアクセスも良く、真鶴の美しい港を一望できるロケーションに佇む「炉端焼き 傳」。老舗干物店「魚伝」が手がける、炭火焼き干物と羽釜ご飯が自慢のお店です。どの料理も丁寧に調理され、素材の良さを最大限に活かした逸品ばかり。豊富な干物がラインナップされ、同じ干物でも全く違う味わいを楽しむことができます。
すばらしいロケーション、落ち着いた店内に美味しい干物、そして何より、店主の温かい人柄と明るい女将の笑顔が、この店を特別な場所にしています。真鶴観光のランチに、この特別な場所に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
基本情報
■ 営業時間
ランチ:11:00 – 15:00(LO 14:30)
(イカ爆弾は開店前の10:00〜 販売)
■ 定休日
火曜日
■ お支払い
現金、クレジットカード、QRコード決済、電子マネー
■ 所在地
〒259-0201 神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1947−96